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112 外の世界に怯えた日

112 外の世界に怯えた日

 
 
2021.11.29 
 
 
この日の事はよく覚えています。

いつも、ゲームばかりで引きこもっている長男を、主人がテニスに誘いました。 
 

 

長男の小学校区ではない、少し離れた地区のテニスコートのある公園に行きました。 

遊具があり、その奥に広いグランドがあり、その更に奥へ行くと、テニスコートがありました。 
 

 

長男は同年代の子に会う事を極端に恐れていました。 

 

行きは、他の子供たちが遊んでいる遊具やグランドを避けて、テニスコートへ向かいました。 

 

テニスコートは高い塀に囲われており、外から中の様子は見えません。 

 

長男は、あまり元気がないものの、周りの視線を感じないテニスコートで、伸び伸び遊んでいました。 

 

家族でテニスをし、帰路に付く際、私は下の子のお世話をしていたため、主人と長男が先にテニスコートを出ました。 

 

主人に長男の状態を話してはいるものの、普段の様子を見ていないため、同年代の子供達がいる空間を、どれ程長男が恐れているのかを、主人は理解していませんでした。 

 

主人と長男は私より100メートルほど前を歩いていました。

 

主人が先に歩き、長男が後を追っています。

 

主人は、沢山の子供のいるグランドの真ん中を通り、遊具の方へ向かっていました。 

後ろから見ても、長男の様子がおかしいことが分かりました。 

 

主人は気が付いていません。 
 

 

私は下2人を残し、長男の方へ駆け寄りました。 

 

声を掛けると、振り向いた長男の顔は、今にもこぼれ落ちそうな涙を目に溜め、あたふたし、体が震え、隠れる場所を必死に探しているようでした。 

 

私が、 

「大丈夫?」

と聞くと、 
 

 

我慢していた涙があふれ出しました。 

 

「帰りたい、帰りたい、帰りたい!帰りたい!!!」 

「車どこ!早く乗りたい!」 

「早くここから離れたい」 

「ねー、車どこ」 

「ねー!ねーー!!ねーーー!!!」 

 

周りに子供が沢山いるため、呟くような声で、それでも叫んでいるような雰囲気で、口をへの字にし、私の体で、自分自身の体を隠そうと小さくなっています。 
 
 
 
徒歩5分程の場所に車が停めてあり、駐車場へ行くには沢山の子供のいるグランド横を通る道しかありませんでした。 
 

 

私は、長男に、

「急いで車取って来るからね、待っていてね」 

と言うと、

 

 

長男は、

「嫌だ、嫌だ」 

「早く、早くしてよ」 

「なんで、なんで車遠くなの!」 

「ねー、何で、早くしてよ、早く車乗りたい、帰りたい、帰りたい」 

 

と、周りをキョロキョロと見渡し、隠れる場所を探しています。

 

私はグランドと長男の間に立ち、視界をさえぎりました。 

 

 

公園と道を挟んだ向こう側に自販機がありました。自販機の後ろに回れば公園からは長男の姿が見えないので、長男をそこで待たせ、私は急いで車を取りに行きました。

 

 

私は主人に、パニックになる前の感じだから、長男から離れないでほしいとお願いし、急いで車を取りに走りました。 
 

 

車に乗り込むと、長男は、ダッシュボードに入れていたゲーム機を乱暴に手に取り、狂ったようにゲームを始めました。 

 

そんなに近くて、画面が見えるの?と思う程、ゲーム機に顔を近づけ、

 

「おー、すげー」 

「わー、勝った」 

「おー、楽しい」 

と、不自然にずっと1人で叫んでいます。 

 

助手席に座り、前のめりでゲームの世界に入り込む長男の姿は、異様な雰囲気で包まれていました。 

 

運転しながら長男の顔を、ふと見ると、顔が涙でぐちゃぐちゃでした。 

 

声だけ聴いていると、笑っているのに、顔は涙でぐちゃぐちゃ。 

 

その涙を拭うこともせず、ひたすらゲームボタンを押し続けます。 
 
 

・・・ 
 
 
私が泣いてはいけない、私が泣いてはいけない、涙が出ないように、涙が出ないように、と思えば思うほど、喉の奥の辺りが熱くなり、痛くなり、自然と涙がこぼれ落ち、止めることが出来ませんでした。 
 

 

今でも、この出来事、あの時の長男の様子は、昨日の事のように、鮮明に覚えており、脳裏から離れません。 
 

 

この世に出て、まだ8年しか経っていない子供が、なぜここまで苦しむのか。 
 

 

私の、何が、この子をここまで追い詰めてしまったのだろう。

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