314 習字教室
314 習字教室
2022年10月はじめ
次男は、いつも、
「僕はばかだから、何をしたって上手くできないから」
「できなくて、馬鹿にされるのが嫌だから」
と何事にもチャレンジしたがりませんでした。
・・・
始めは行く事を躊躇っていた発達凸凹塾に通うようになると、その先生が次男のペース、特性に合わせ、強要をせず、出来ていることだけを見つけ続け、「素晴らしい、素晴らしい」と褒めてくれるので、次男は少しずつ人と関わる事が楽しみになり、私に、
「他の習い事もしてみたい」
「僕、色々やってみたい」
と前向きな発言をするようになりました。
「僕、字が上手くなりたいから習字に行ってみたい」
と次男が言うので、私は知人が通っている、のんびりしている、という習字教室の体験予約をしました。
その頃次男は、まだ、学校でも他の友人とは会話をする事もなく、孤立していたので、私は、習字の先生に、
次男は慣れるまでに時間がかかる子なので、初めからビシバシと指導をしないでほしい、信頼関係が築けると、指示が通りやすくなるので、ゆっくり関わってほしい
と伝えていました。
私は、次男が少しずつ、人と関わる事に慣れてくるといいな、という思いでした。字が上手くなってほしいとか、そんな気持ちはありませんでした。
次男の様子を説明し、その先生自体もお孫さんが自閉症児で発達障害児さんの扱いには慣れている、と聞いていたのですが、先生は初めから次男に、
「姿勢が悪いよ」
「そっちから書き始めてはだめ」
「枠から字をはみ出さないで」
「頭を上げで」
「返事は?」
と座って字を書き始めた次男に、一つも褒めず、出来ていない事を指摘していました。
私は、とても嫌な予感を抱きながら、横に黙って座っていたのですが、次男は、うつむき、字を書く姿勢のまま、頭を上げませんでした。
動かないな、と思って横で様子を見ていると、次男の指先が震えだし、強く指導された時の姿勢のままで、涙をぽとぽと流し始めました。
次男の目から出た涙が、硬筆の用紙に落ちても、次男は完全にフリーズしていて、その姿勢から、少しも動くことができませんでした。
私は、内心、
「だから、最初は指導はせずに、信頼関係を作ってほしいと、あれほど頼んだのにな・・・」
と思っていましたが、一般的な子は、初めから強く指導されても問題なく通えるのだろうな、と思い、次男の背中をさすりながら、
「どうしたい?もう帰ろうか?」
と言うと、次男は、魔法が溶けたかのように、ガチガチに固まっていた体の力が抜け、ひーひーと声を出して泣き出し、腕で涙を何度も何度も拭いていました。
先生は優しく、
「ごめんね、ごめんね」
と言っていましたが、次男は先生の話を聞くことはなく、その日は帰宅しました。
車に乗ると次男は、
「怖い、怖い、嫌だ、やりたくない」
と泣きながら言ったので、その習い事をするのは止めました。
・・・
少しの事で怯えてしまう次男の弱さは理解していますが、信頼関係が出来れば、指示が通るようになるのにな、初めに特性のある子です、とお願いしたのにな、上手くやってくれないな、理解がないな、というのが私の感想でした。
やっぱり発達障害塾の先生はプロだな、上手いな、と改めて思いました。
指導者が、その子その子の個性に合わせ、指導方法を変える事が出来たら、困難のある子も、今よりもきっと、その子の個性が伸びていくのではないかな?と私は思っています。