157 次男の入学式
157 次男の入学式
2022年4月6日
次男の入学式でした。在校生は旧クラスで1年生の入学式に参加しますが長男は家で眠っていました。
次男は緊張はしているものの、特に嫌がることもなく出発しました。
入学式の列に並んでいると、次男はランドセルを主人に持たせ、主人のワイシャツの中に手を入れて、ガチガチに体を固まらせ、主人にしがみついていました。
表情が硬く、周りでニコニコ笑いながらランドセルを背負っている無邪気そうな子供がやたらと目につき、「あー、またうちの子だけだ」そんなことを思った記憶があります。
次男を教室に送り届けました。
次男の名前が書いてある机まで送っていき、保護者は体育館へ行くよう言われました。
次男に「後でね」と言い、教室を出ました。振り向くと次男は体を突っ伏して、ガチガチにフリーズした体をねじり、何とか座っているように見えました。
私は主人に、
「卒園式、知り合いばかりの場所であんな感じだったし、入学式は知らない人ばかりだし、大人数だし、どんな感じになるか分からないよ」
「学校側には、絶対に無理やり式に参加させたり、頑張ろうねと声をかけすぎたりしないでほしい、式場に入れないなら、親が付き添うのですぐに呼んで下さい、と伝えてあるから」
と言うと、
主人は、
「分かったよ」
とだけ言い、うなずいていました。
式が始まると、元気そうに入場する1年生の中に次男はいませんでした。
皆が入場し終わり、式が始まるころ、次男は付き添いの先生2人に支えられ入口に立っていました。
ほかの1年生は全員着席しています。
保護者席から遠目で見ていても、次男は両肩が頬のあたりまで上がり、体が動かない、そんな様子が伝わってきました。
私は付き添っている先生の方を見ていました。
付き添ってくれていたうちの1人が、長男の2年生の時の担任の先生で、面識がありました。
先生がこちらを向き私に目配せをしたので、私は主人とすぐに先生の方へ行きました。
次男を引き取り、私と主人と次男は3人で体育館横のテラスで運動場の方を向き、式とは関係ない、何でもない話をし続けました。
校長先生が何か話している声が、何となくぼんやり響いて聞こえてきました。
しばらくすると次男が、
「僕、中に行かなくていいの?」
と聞きました。
私は、
「どうしたい?」
「自分で決めていいんだよ」
と言うと、しばらく考え、中を覗いていました。
またしばらくすると次男は、
「中に入る」
と言い中に入りました。
1年生の席には行かず、保護者席で両親の間のパイプ椅子に座り、お山座りをしたり、体をのけぞらせたり、体を終始くねくねさせて落ち着かない様子で式に参加していました。
パイプ椅子の上でずっと動き続けるので、ズボンの中に入っていたワイシャツは全て出てしまっていました。
式が終わり集合写真を撮る際、次男は上履きを履けませんでした。
「写真の時だけ履いておこうか」と言いましたが頑なに嫌がりました。
整列の順番を指示している先生が次男に話かけました。
「写真」「撮る」「ここ」「座る」「〇?」「座る」「ここ」
単語に区切って、聞き取りやすいようにはっきりと話しかけ、〇?と聞くときは両手で〇を作って次男に見せていました。
あー、【単語でしか言葉の通じない子】として話しかけているんだな、とすぐに分かりました。
次男は普通に会話のできる子です。
今は新しい環境が苦手なため、緊張で体がフリーズしているだけでした。
話かけてきた先生に悪気がないことも、親切心であることも理解した上で、私はその配慮がとても不快で、不安な気持ちが生まれました。
この子は普通に会話を理解するのに!そんな話し方しなくてもいいのに!
そんな気持ちと、
この子は周りから見たら、明らかに健常児ではないのだな、そうなんだな。
そんな気持ちの入り混じった、入学式に本来ならば感じるであろう【幸せの感情】とは程遠い感情でした。
式が終わり、子供たちは教室へ戻りました。
次男は担任の先生と一緒に教室へ行きました。
次男を見送ると主人が、
「今日の様子を改めて見ていると、貴方には今まで苦労をかけていたんだろうね。イベント毎に、いつもこんな感じだったんだよね?大変だったよね?なんか、こんな父親で申し訳ないな。これからは協力していこう。今までごめんなさい。絶対にあの子達の未来を切り開ける場所を探していこうね」
と私に言いました。
帰りは通学団に顔合わせをしながら一緒に帰る予定でしたが、次男は通学団の方へは行かず、無意識かのようにふらふらと正門に向かい、帰ろうとしていました。
私と主人が、
「今日は通学団で行くんだよ」
と何度か言いましたが、次男はうろうろし、目がうつろで正常には見えなかったため、主人が教頭先生に、
「申し訳ないけれど、今日はもう帰らせます」
と言い、主人と次男は先に帰りました。
私は子供たち全員が帰るのを待ち、次男の担任の先生にお礼と謝罪をし、帰宅しました。
家に帰ると元気いっぱいの次男が遊んでいました。
「今日はお疲れさまでした」と言い、それ以上式の話はしませんでした。
この子は、明日からどうなるのかな?学校行けるのかな?
長男の部屋を覗くと、在校生として式に参加するはずの長男が、まだ布団の中で眠っていました。
なんとも言えない悲しい気持ちになりました。
心の中で、なんでうちの子だけ、どうして2人とも何かがおかしいの?皆が出来ることができないの?その気持ちを完全に拭い去ることを、私はなかなかできませんでした。